着物美人

洋服に慣れていればいるほど、着物を着た時のギャップは大きい。
自分の中での気持ちのギャップだ。それは行動に全てあらわれる。

まず、背筋が伸びる。
次に内股で、なお且つ狭い歩幅、すり足で歩くようになる。
腕を挙げるときは、露わにならないように左手を添える。

物を持つ時も同じだ。
表情も穏やかな笑みを心がけ、笑う時は口を隠す。
指の間を広げるようなこともしない。

子供時代、着物で育ったわけではないが、着物を着ると、この全てのことを当たり前にしてしまうのだ。
洋服を着ている時であればかなり難しいことなのに、着物を着ていれば自然とそうなっている。

心のどこかで、この雅な着物に負けたくない、という気持ちがあるのかもしれない。
外見に負けないように、中身も綺麗になりたいというものかもしれない。
せっかく着物を着ているのだから、美しく見えないような所作はもったいない。

着物に相応な所作は、その人自身の気品もあげるのではないかとさえ、私は考えている。
ただ、着物を着ていても、大雑把な人は所作も大雑把であり、本質的には人間は短期間で変われないということがよくわかるし、日頃の生活習慣が見えてきてしまう。

「お行儀」という言葉を最近は聞かなくなってしまった。
若い女性が道端にあぐらをかいて座っている様を見ると、これでは男性も寄り付かないはずだと考えてしまう。

そして数年たち、適齢期になったとしても、かつて道端に座っていた性根は取れるものではない。

»